2013年1月23日水曜日

猫は夜中に散歩する/田中小実昌・著

 著者のエッセイ集。およびその連載を集めた本。
ほとんど赤裸々とも言えるような内容で、しもねた中心に著者自身の事を書かれているあたりは、勇気があるなぁ、と関心する。自身の事-パイプカット手術、包茎手術をした話、ほとんど毎晩新宿で飲み歩き、ひどいときは記憶をなくすまで酔いつぶれる話。自身の「息子」についての話、短いけど太さは十人並みだ、とか。さらに理屈っぽいくだりの話。など興味をひかれる話題も多かったが、途中で飽きてしまい、読むのを止めた。1980年(昭和55年)1月出版。

2013年1月17日木曜日

五体不満足/乙武洋匡・著

 もうこの本をご存知の方は多いだろう。まだ読んでなかったのか、という事を後悔するような良著だった。
 彼の半生、と言っても20歳くらいまでの生涯を綴った自伝である。何度も熱いものがこみ上げてくる良い本だ。
 先天性四肢切断という症状を持って生まれてきた彼だが、暗さ、悲観的といった言葉からは無縁の元気一杯、明るく過ごしてきたことが、この本からわかる。と同時に健常者である私達の「思い違い」なども改めて教えてくれる、気づき、の本でもある。
例えば障害者を見て、つい「かわいそう」と思ってしまうが、ただ四肢が無い、というだけで、自分も一個の人間、皆となんら変わらない、目の悪い人がメガネをかけるように、手足が無いから車椅子に乗るのだ、というフレーズは、こちらの心をビシッと戒められたような気がする。
 この本を読んでないかたがいれば是非お勧めしたい。

2013年1月3日木曜日

花まんま/朱川 湊人・著

 ほとんどの本は家近くの地区センターで調達している。ランダムに選んだ本を読み感想をこの部ログに書いているわけだ。そしてたまにとんでもなくお気に入りの作家を発見することがある。
本日がまさにそれだ。全くの私好みの作風を描く作家に出会えた。
 幼い妹フミ子が熱を出し、完治した後、まるで別人に変わってしまった。彼女が言うには、自分は岐阜・彦根にすんでいて、エレベーターガールをしていたが、狂人に突然襲われ、この世を去った、喜代美だと言い出す。初めは言うことを信じなかったが、ある日、フミ子がどうしても彦根に行く、と言い出す。困った兄の俺は、しかたなく、フミ子のお供をし、生前の住処である家にたどり着く。そこには、娘の死を乗り越えられずにやせ細った喜代美の父の姿があった。しかし、フミ子にその父との対面を絶対に許さなかった俺の意見を受け入れる代わりに、フミ子から使者の役割を頼まれた俺は、その父と対面し、フミ子が作った「花まんま」-花で作ったおままごとのお弁当-を手渡す。それを受け取った父は、亡くなった喜代美からのメッセージと受け取り、残りの余生をしっかり過ごす事を受け入れる。
 昭和3,40年代の大阪を中心としたホラーともとれる不思議な話が展開される作風。しかし、怖さよりもその登場人物をに描写の中心がいき、心が温かくなる作風となっているところが、好きだ。
私の一押し作家の一人としたい。