2012年4月10日火曜日

もどり橋/澤田ふじ子・著

江戸時代(天明1781-88)期の京都の庶民生活を取り上げた時代小説。京の料理屋末広屋に年季奉公にでることになった百姓の娘、お菊の視点から視た悲喜こもごもの日常。同輩には、有名料理屋の息子才次郎、武家の息子小忠太、才次郎にとりいり、なんとしても未来をきりひらこうとこびへつらう市松、生真面目な又七らがいた。何かにつけ鼻持ちなら無い才次郎がついに年季前に暇をもらい、家業若狭屋を継ぐが、うまくいかない。せっぱ詰まった才次郎は押し込み強盗に入り金品ばかりか、そこの夫婦を殺してつかまり、磔け獄門に。お菊と密かに心を通じてお互いに好き合っていた又七に突如末広屋の娘婿になるという縁談が舞い降り、又七は苦渋の末、お菊ではなく、末広屋を選ぶ。お菊も悩み抜いたが、やがて吹っ切り、末永くこの末広屋で働く覚悟を決めるが、心は晴れない。そんな折、年季が明け、国許で料理指南役をしている小忠太からお菊あてに嫁に来て欲しいと末広屋に使者をよこした。あまりの大きな幸せを前に打ち震えるお菊に、冬の虹が優しく見守るのだった。
題名の「もどり橋」は京都、堀川一条の戻橋。人が人生で幾度と無く出くわす災難の象徴である「川」にかかっている。

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