2012年5月7日月曜日

彩月/髙樹のぶ子・著

季節の短編という副題がついている通り、ショートストーリが12編。様々な人生模様をSF的な雰囲気をだして、面白く読める。 岬近くのひなびた旅館に、につかわしくない、身なりのしっかりした夫婦が宿泊する。実は、妻の方は若くして痴呆を患っており、病状が進む前に夫に「自分がぼけてしまったら郷里の岬から、私を突き落として欲しい、」と夫に約束させていた。やがて、完全にぼけが進行し、もはや排泄などの生活習慣さえ覚束ない状態となり、夫は約束を守るべきか、破るべきか、悩む。海辺でのひと時、妻は見慣れない貝がらをひろい、その貝の名前を言い当てる。そこには、往年の愛した妻が意識を取り戻していた。しかし、その後病状は元に戻り、もはや貝の名前どころか、それが貝であるかさえも不明の様子にまたしても夫の心は揺れ動く、「月日貝」 刑期を終えて晴れて出所。自分を待っている妻、美津江のもとに車を急がせる男。やがて、懐かしい故郷の景色が見え、我が家へ。妻は暖かい食事を用意して待っている。と夢は終わり、起き上がると刑務所の中。もうじき刑期を終える男に、看守は男が殺した妻の墓をみまってやれ、と言い、男もそうするつもりだ、と応える「夜神楽」など。

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