2012年6月10日日曜日

邂逅の森/熊谷達也・著

秋田のマタギ・富冶の生涯を綴った話。 大正3年ごろ、マタギを始めて3年程の富冶はようやく1人前のマタギとして認められはじめた。そんな頃、町長の娘と恋愛し、子供を作ってしまう。二人は見つかり、富冶は町長の策略で、山奥の鉱山で住み込み働きを命じられ、娘は町長の見つけてきた医者の卵と結婚させられる。鉱山では最低3年働かないとふもとに降りる事はできないことを知り、富冶は娘・文枝をあきらめる。一方、鉱山で働くうち、富冶に子分の小次郎ができる。マタギの仕事がわすれられない富冶は、小次郎の誘うままに、小次郎の育った村で、新たに組を作り、マタギの仕事を再開、小次郎の姉イクと結婚し、16年後、イクとの間にできた娘を同じマタギ仲間の鉄五郎の息子のもとに嫁がせる事ができた。そのころ、富冶はマタギを引退しなければいけないか悩みはじめる。そんな時山の主と称される大熊が出現、富冶はこれを「山の神」の化身と考え、これに勝てばマタギを続けると決心する。熊との一騎打ちは熾烈を極め、富冶は左頬の肉をとられ、右足はふとももの肉、そして足首を失う大怪我を負い、マタギを引退どころか、生命の危機を負う。意識が薄れかけた時、かろうじて討ち取ったはずの山の主が目の前に現れ、富冶を妻の待つふもとの村ちかくまでいざなう。ラストシーンは富冶がいざなわれ、村を見下ろす丘まで戻ってきたところで終わる。

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