2012年6月14日木曜日

花腐し/松浦寿輝・著


 祥子が入水自殺をしてすでに十何年も経とうとしているのに、クタニは今だに彼女の想いをひきずっていた。経営していたデザイン事務所も徐々に行き詰まり、最後は共同経営者の友人に逃げられ、今はもう不渡りを出す寸前であった。現在のクタニは、そうした肩書きを持ちながら、知り合った金融会社の社長に頼まれ、立ち退き屋の仕事でなんとかしのいでいた。最後の住人の井関は、一風変わった男で、妙に馴れ馴れしく、クタニに近づいてくるが、疎ましくも嫌えないのであった。2人で酔ううちにクタニは現実と過去と幻想が入り混じってくる。祥子がすぐ傍らで囁くようでもあり、また、井関の部屋にいた裸の少女は、井関の栽培しているマジックマッシュルームでうつろな表情であるが、それもまた現実とは思えなかった。酔った後、井関の部屋で飲みなおすうちに、クタニもマジックマッシュルームの臭気にやられたのか、現実が定かでないなかで、裸の少女とセックスをしているようであり、股間の感覚はあるのに、現実感が無い状態であった。気がついた時には誰もいず、部屋を出てみたがほぼ一昼夜寝ていたらしく、外はすでに夕闇の中。なんとなく居心地の良いアパートに自身が住んでみようかなと思いながら階段を降りるクタニ。その視界の横に死んだはずの祥子の姿が見え、クタニは降りきった階段をまた上りはじめるのだった。

 自分的には、苦手の「文学作品」を引いてしまったようで、何を言いたいのかさっぱり分からない作品。

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