2012年8月14日火曜日

ほかならぬ人へ/白石一文・著

 資産家宇津木家の末っ子に生まれながら、どうしても自分を好きになれない性格の明生は、普通の企業に就職する。程なく周囲もうらやむ美人な妻、なずなと結婚した。夫婦円満と思われたが、2年後、なずなが以前付き合っていた彼のもとに気持ちをもどしてしまい、夫婦の間に亀裂が。宇津木家を嫌い、距離を置いていた明生は相談相手として直属の女性上司東海を頼っていた。東海は明生より数歳年上であり、きっぷの良さも持ち合わせていたが、何故が明生とウマがあった。また、東海は決して美人ではなかった。スタイルはむしろ良いほうだが、自分でも「ブス」と公言し、ながば周囲の暗黙の了解であった。明生はしかし、むしろそんな彼女に安心感を覚えていた。結局、明生達夫婦は、なずながどうしても以前の彼への想いを断ち切れず、彼を追いかける形で家を出、そのまま離婚へ。明生はその間、何度も相談を東海に持ちかけるうちに東海こそが、自分に取ってかけがえのない人であることに気づく。その後明生は東海に求婚する。しかし、東海にガンの再発が見つかり、結婚生活は4年ほどで終わる。
 本当に自分にとって大切は人というのは必死でさがせばかならず見つかる、という小説中のセリフが心に響く、秀逸な恋愛小説であった。他「かけがえのない人へ」を収録。

0 件のコメント:

コメントを投稿