2012年8月5日日曜日

わたしを離さないで/カズオ・イシグロ・著

物語の語りべであるキャシー・Hが昔を振り返る形で物語は進行していく。
キャシー、トミー、ルースらはある施設で育った。保護官と呼ばれる大人が規則を律し、統治しており、ヘールシャムと呼ばれる施設だった。彼女らはしかし、ここが一般の孤児院などではない事に次第に気づいていく。やがてヘールシャムを出てその上の段階である「コテージ」に移送される頃になると、自分達はクローン人間であり、生きていく意味は、オリジナルである人間のための臓器提供にあることも理解する。普通の人間としての生活は許されない彼女達だが、その代わり、ある程度の自由があり、生活の保障があり、保護下に置かれた生活だが、コテージを出て行くころには臓器を提供しなければならなかった。一般の人間と全く変わらない心を持ちながら、必要とされれば内蔵をいやおう無しに突然切り取られ、そのために一人、また一人と仲間達が死んでいく。その中でまことしやかに、ある噂が流れる。それは、仲間同士で愛している事を証明できれば、臓器提供を3年猶予してもらえるというものだった。キャシーとトミーはそれを信じついに証明するために「マダム」と呼ばれる人物に面会を挑む。しかし結果は無残なものだった。それは単なるデマであり、トミーは4回目の提供後、死んでゆく。残されたキャシーはやがて自分の番がやってくる事を静かに待ちながら、トミーやルースと昔旅行した場所などを訪ねるのだった

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