2012年8月19日日曜日

真昼のプリニウス/池澤夏樹・著

頼子は、弟春馬の知り合いで広告デザイナーの門田と知り合う。門田は頼子の火山学者としての観点から面白い小話を知りたがった。理由は不特定多数の話を3分ほどにまとめたものを数千用意して、電話サービス(小説は1989年刊)を開始するためだった。頼子は対象になりそうな話を考えているうちに現在メキシコの遺跡を写真におさめている恋人の壮伍の事を想い、彼とのこれまでの関係を改めて考えるようになる。ほとんどつかず離れずで恋や一緒に暮らす事などよりもお互い仕事を第一としていた、その気持ちに少しずつお互いが近くにいて欲しい、という気持ちが強まってくる。一方、門田から電話サービスの話を集める間易者の話から来週末、浅間山の方向に何かがおこるという預託をもらったと、聞かされる。浅間山は頼子の研究している火山だった。 詳しく詰め寄る頼子だが、門田から頼子を慕っている旨の告白を受ける。頼子はぴしゃりとはねのける一方、易者のもとへ行き、占いの真意を正すうち、突発的に浅間山に向かう。登山を禁止されている火口付近まで単独て行動し、密かに登頂しようと、前日の深夜ふもとで夜を明かす。頼子は火口からどくどくしいマグマが溢れ全ての物を焼き尽くす光景を想像し、そうなると思いつつ、かたや普段と変わらない日常が続く、という思いの交錯にひたる。  プリニウスとは、古代ギリシャの火山学者。噴火中の火山に仲間を助けるために向かい、命を落としたとされる。

0 件のコメント:

コメントを投稿