2012年3月18日日曜日

13歳の黙示録/宗田理・著

2011年5月18日
 前回読んだのと同じ少年犯罪にまつわる話。文体が優しい分、「天使のナイフ」に劣るか、とおもいきや、著者の方がベテラン、1枚上手であった。ストーリー展開にもう一工夫が効いていて、こちらに軍配が上がる。
 中学教師の秋元千佳は、同じ教師の内山と数日後挙式というところで、教え子の幸雄に刺殺される。幸雄は札付きで、小学校から申し送りがあった子供だが、千佳は何故か目が離せず、何かとめをかけていた。当初、殺害は千佳に恋心を寄せていた幸雄が結婚すると知って逆恨みの末、殺害に及んだと推測されたが、事実は意外な過去を持ってあばかれる。13年前、女性教師が生徒に刺殺される。その教師を刺したのは、内山だった。その教師には、生後まもない幼子がおり、それが、成長した幸雄だった。事実は、幸雄は内山を殺害しようとナイフを抜き、内山に近づいた。その内山との間に千佳がいたことも目に入らぬほど、憎悪は増していたのだ。自分をかわいがってくれた教師を刺そうなどとは、幸雄は全く考えていなかったのだ。
 本作は、少年法の加害者側に不等という事柄のほかに、なにより「殺人」はよくない、という単純明快な戒めを、残された遺族の凄まじい現実、一人の命をうばうことで、どれだけの人間の人生を狂わせてしまうか、ということに焦点があてられている。

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