2012年3月11日日曜日

首飾り/雨森零・著

2010年10月15日
良い作品だった。
主人公(語り手)れいと、秋(しゅう)、そしてななの3人を、幼い頃から16歳位の年齢まで描く。幼いころから小学高学年までは何をするにも一緒の三人だったが、やがて中学生となり、お互い男女を意識し始め、性に目覚め、小さい頃の三人でいたい、と望みながら、決して過去のようにはなれない事を知っていく。
きっと誰にでもある遠い昔の幼い頃の記憶などを思い起こさせてくれる文体が光る。物語背景は、山奥の寒村 虹沢というところが舞台。三人は毎日野山を駆け巡り、毎日が永遠にあると思われた少年時代。やがて中学生になり、思いは三人の三角関係となって混沌としていく。「太陽の音をきいたよ。」や「最も高い位置の太陽は、今沈み始めている。咲き誇っている最も美しい時期の花は、その瞬間も腐り始めている。」などの文章が印象に残る。
物語を面白くしようとして、おこる事件が一般の生活をしている人間には少々馴染みがないが、作者の伝えたい事はよくわかる。
物語は、ななが16の年に病死し、それ以来ぶっつりと三人の関係が終わり、10年の時が経過、4年前に秋の乗った船が難破し、れい一人が生きているという近況報告で終わる。

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