2012年3月18日日曜日

悼む人/天童荒太・著

2011年7月22日
坂築静人は、見ず知らずの亡くなった人々を追悼して全国を渡り歩いており、密かに「悼む人」と呼ばれ、ネットでは名前が知れていた。生前その人は誰を愛し、誰に愛され、どのように人々に感謝されたかという事柄のみをきいてまわり、その人がどうして亡くなったか、という事に一切触れない彼の行為は、人々に賛否両論で受け入れられていく。当初、数日間の旅程であった彼の悼みの旅は、いつしか数年間、自宅に帰って程に。物語は、静人の悼む旅を中心に同調する女性の出現、最初は静人を偽善者と決めつけた記者が、様々な事件の後に改心していく過程、そして静人の母、巡子が、ガンに冒され余命数ヶ月で、徐々に衰弱していく様子が描かれる。最後は、唯一の理解者である奈儀倖世と関係を持つものの、倖世は、自分が愛される事で静人の悼む旅に支障が出る事を恐れ、又、自らも静人のように悼む人となるべく、別れを告げる。エピローグとして、巡子の死ぬ間際の話となり、死の直前、静人が母の臨終に間に合うところで終わる。

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