2012年3月11日日曜日

百日紅の咲かない夏/三浦哲郎・著

2010年12月10日
 原題は冷夏であるという意味。=異常気象=特別な年という意味を持たせている。
 主人公の比佐と、十数年振りに再会した弟の砂夫の身におきた出来事を綴っている。十数年振りに再会し、週に一度泊まっていくまでに兄弟の絆を回復させていた。砂夫は、住み込みの修理工で、叔父の自動車工場に勤め、そこの娘鳥子に好意をもたれる。一方、比佐は、悪徳商事に祖母の財産が狙われていることを知る。ついに悪事が露見し、ショックで祖母は倒れ植物人間になる。祖母を追い込んだ商事は倒産するが、比佐はその元営業に次第に惹かれていく。砂夫も次第に鳥子に惹かれていくが、整備士の藤夫が横恋慕する。比佐は、ついにその元営業の北尾にプロポーズを受けるが、自分の心の中に砂夫しかいないことを悟り、愕然としながらも、プロポーズを断る。一方、砂夫も鳥子を好きでいたが、恋愛に発展するほどではなく、単に従妹としてであり、むしろ気持ちは姉の比佐に向いている事を悟る。そんなおり、鳥子が無理やり酒をのまされて、藤夫の手に落ちる。それを知った砂夫は藤夫を刺し殺す。人を殺してまで生きていたくない砂夫は、姉に相談しに行き、比佐も砂夫以外考えられない、ならば一緒に死ぬまでと思い、二人で集団自殺を決行する。要するに兄弟の禁断の愛に苦しみ、死を選ぶまでの道程が描かれている。

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