2012年3月18日日曜日

ツアー1989/中島京子・著

2011年7月1日
口伝に「迷子付きツアー」と呼ばれ、ひそかなブームとなったツアーがあった。参加者の一人が海外旅行中にいなくなる。ツアーの参加者達は「おかしいな」と思いながらも何事もなかったかのように帰路に着く。そんなうわさがうわさを呼び、ミステリアスなツアーとして人気を呼び、広まった。仕掛け人は格安航空券で急成長したある旅行会社のある社員だった。ありきたりの旅では満足しなくなったバブル時代を象徴する出来事だった。
ストーリーは別にこれ以降展開するわけではなく、この「何かを忘れてきた」ような不思議な感覚にとらわれながら、別々の主人公が別々の人生を歩んでいく、その様を4章で構成してある。これらは、月日を別にそれぞれ小説誌に掲載されたもので、単独でも成り立っているし、通して読むことも可能だ。とにかく、いままで感じたことのない文体というか雰囲気を持ち合わせた作品だった。(蔵書)

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